南アフリカで建設が進められている石炭火力発電所向けの設備をめぐり

南アフリカで建設が進められている石炭火力発電所向けの設備をめぐり、合弁パートナーの三菱重工業日立製作所泥仕合を演じている。両社の火力発電関連事業の統合前に日立が受注した発電所向けボイラーのコストを負担するよう、三菱重工が7700億円の支払いを要求。日立はこれを突っぱね、対立は外部機関に仲裁を委ねる異常事態に発展した。世界のトップと対等に戦うための統合だったが、損失の押し付け合いが続けば共倒れに終わりかねない。

 「事業統合で攻めに出るはずが、安値攻勢を受けている」。三菱重工関係者はため息交じりに漏らす。

 ◆「米独を追い越せ」

http://www.pokersns.jp/diary/34496
http://www.pokersns.jp/diary/34495

 三菱重工と日立が火力発電所向け設備の事業を統合し、それぞれ65%、35%を出資して新会社「三菱日立パワーシステムズ(MHPS)」を設立したのは2014年2月のことだ。背景にはこの分野で先行する米ゼネラル・エレクトリック(GE)と独シーメンスを追い越すとの強い決意があった。統合に当たり、新会社は日立から事業を譲り受ける形をとったが、その中に南アのプロジェクトも含まれていた。

 日立はこのプロジェクトを統合前の07年に約5700億円で受注。ヨハネスブルクにほど近いメデュピ発電所とクシレ発電所に各6基の大型ボイラーを納める契約を結んだ。ところが、ノウハウのない現地企業を使うよう求められた上にストライキが頻発。初号機の運転開始は当初予定の11年から15年にずれ込み、費用は大幅に膨らんだ。

 三菱重工は「そもそも受注条件に問題があった。統合後に発生した損失も原則として日立が全額負担すべきだ」と主張する。これに対して、日立は「統合後に発生した費用はMHPSが負うことになっている」と反論し、一歩も譲らない。

 ◆ボタンの掛け違い

 日立が事業をMHPSに譲渡した際、遅延していた南アの案件については暫定的な価格を決めておき、後で確定させる段取りを踏んだ。事業統合のスピードを優先するための方策だったが、これがボタンの掛け違いを生んでしまった。

http://川口あんてな.com/matome/817
http://kjbyby.net/show/wqcav0s

 業を煮やした三菱重工は7月31日、商取引の紛争の解決を図る日本商事仲裁協会に仲裁を申し立てた。16年3月時点では約3790億円を請求していたが、今年1月には約7634億円に引き上げ、仲裁申し立てに際して約7743億円まで積み増した。同社は「契約上(約7743億円を)請求する権利があったのを留保していた。金額が変わったのは精査した結果」と説明する。一方、通知を受け取った日立は「請求は契約に基づく法的根拠に欠け、受け入れられない」と改めて支払いを拒否した。

 三菱重工は17年4~6月期に請求額のうち3182億円を資産として計上済みで、満額を受け取れれば利益が出る。逆に一銭も入らないようだと損失を覚悟しなければならないが、小口正範最高財務責任者(CFO)は「念頭に置いていない」と自信をみせる。

 一方、日立は既に一定の引当金を積んでいるが、その額は3000億円以下とみられる。3790億円の支払いなら1000億円単位、7743億円の支払いなら5000億円超の損失となる可能性が高い。どちらが負担することになっても影響は甚大だ。